管理職の育成力を高めるには?組織で支える方法
- HUGME代表 高橋

- 7月5日
- 読了時間: 15分
管理職の育成力に差が出る理由とは?底上げする仕組みを解説
管理職の育成力は、「個人のセンス」ではなく、役割定義・育成スキル習得・現場で試せる環境という3点セットを整えた組織ほど安定して高くなります。一方で、その3つが欠けた状態で“現場頼み”にしている組織ほど、「管理職によって部下の成長スピードが2倍違う」「管理職本人が疲弊している」といった歪みが生まれやすいのが実情です。私自身も、育成を教わらないまま管理職になり、部下育成に何度もつまずいた経験があります。
【この記事のポイント】
管理職の育成力に「なぜこんなに差が出るのか」という構造的な理由がわかる。
管理職の育成力を“個人任せ”にせず、組織として底上げするための具体的な仕組み(役割定義・研修・1on1・フォロー)が見える。
今日からできる「小さな一歩」(チェックリスト・簡易1on1設計・プレマネジメント機会付与)の始め方がイメージできる。
今日のおさらい:要点3つ
育成力の差は、「管理職の役割が曖昧」「育成スキルを学ぶ機会がない」「考える場・振り返る場がない」ことから生まれる。
組織としては、「求める管理職像の明確化→研修×現場経験の連動→フィードバックとサポート」の3層で育成施策を設計するのが近道。
失敗しないためには、一部の“できる管理職”だけを褒めるのではなく、「全員が一定レベルに達するための仕組み」を整えることが重要。
この記事の結論
一言で言うと「管理職の育成力は“センス”ではなく“環境と仕組み”で底上げできる」です。
最も重要なのは、管理職の役割と必要スキルを明確にしたうえで、研修と現場経験、360度評価や1on1などの仕組みを組み合わせて、「学ぶ→試す→振り返る」サイクルを回すことです。このサイクルを欠いたまま研修だけ実施しても、知識は増えても行動はなかなか変わりません。
失敗しないためには、「全管理職に一度きりの研修」ではなく、「昇格前後3年を1セットとした育成プラン」を設計し、経営・人事・上位職が継続的に支えることが欠かせません。短期イベントではなく、中期的な育成プロセスとして捉え直すことが、底上げの土台になります。
管理職の育成力に差が出る3つの理由
1.管理職の役割と期待値が曖昧なまま任命されている
正直なところ、「管理職の役割」を言語化できている組織はそれほど多くありません。
よくあるのが、「結果も出しているし、そろそろ昇格かな」という空気の中で、気づいたら肩書きとして“管理職”になっているパターンです。
ある人事担当者と話していたとき、こんなやり取りがありました。
私「御社で“良い管理職”ってどんな人ですか?」 人事「うーん…数字も出してて、部下からの評判も良くて…」 私「具体的には?」 人事「そこまでは、実は言語化できてないんですよね」
管理職が育たない原因として、「役割の不明確さ」が大きな要因だと指摘されます。
何を期待されているか分からなければ、本人も「今のままでいいのか」「どこを伸ばせばいいのか」が見えません。
管理職の役割については、「業務が基準通り行われるようにコントロールすること」と「目標達成のためにマネジメントすること」の2つに整理できるという考え方もあります。
さらに最近では、「部下の成長支援」「心理的安全性の確保」「変化対応力」といった要素も期待されるようになっています。
私自身も、初めて管理職になったとき、上から言われたのは「とりあえず数字を守って」「チームを任せるから」の2つだけでした。その結果、プレイヤーとしての仕事は増えたのに、育成やマネジメントの優先順位はよく分からないまま。夜、デスクに一人残りながら、部下へのフィードバックメールを何度も書き直し、「これで良いのか?」と削除→再入力を繰り返したことを今でも覚えています。
ケースによりますが、「自社における管理職の役割」を言語化しないまま育成力の差だけを問題にしても、根本的な解決にはつながりません。
まずは、「自社の管理職は何をする人なのか」を明確にし、それを育成と評価の土台にする必要があります。
2.育成スキルを学ぶ機会がほとんどない
実は、管理職の多くは「プレイヤーとして優秀だったから」昇格しており、「人を育てるスキル」は体系的に学んでいないケースが多いです。
その結果、「自分がされてきたやり方」をそのまま部下にコピーしてしまい、世代や環境の違いからうまくいかない…というギャップが生まれます。
管理職の課題として、「マネジメント能力を習得する余裕がない」「部下育成がうまくいかない」といった声がよく挙げられます。
さらに、若手社員のモチベーションや離職率は、上司(管理職)のあり方と密接に関係しているという指摘もあります。
私が以前支援した企業で、新任管理職研修の受講後アンケートを見て、こんなコメントが目に留まりました。
「今まで“育成”と言われても、何をすればいいのか分からず、結局、部下の資料を自分が全部直してしまっていました」
「正直なところ、怒られないように上手くやるのが管理職の仕事だと思っていました。でも、部下のキャリアや成長の話をこんなに真剣に考えたのは初めてです」
管理職育成の方法としても、「リーダーシップ研修やマネジメント研修で基礎知識を習得し、360度評価などで多面的なフィードバックを行う」ことが効果的とされています。
座学だけでなく、現場での実践とセットにすることで、育成スキルは徐々に身についていきます。
私自身、初めて外部のマネジメント研修を受けたとき、「もっと早くこれを知りたかった」と心の中で何度もつぶやきました。特に、「フィードバックは“人格”ではなく“行動”にフォーカスする」という基本や、「1on1では“答え”ではなく“問い”を持っていく」という考え方は、翌日の面談からすぐに使えました。翌朝、部下と向き合うときの緊張感が、少しだけ「話を聞いてみたい」に変わった感覚がありました。
3.学んだことを試し、振り返る「場」と「時間」がない
管理職育成の施策を打っても、「研修をやって終わり」では現場に定着しません。管理職育成施策の効果を高めるポイントとして、「研修以外の環境づくり」が重要だとされています。
具体的には、
管理職同士が学び合えるコミュニティ(対話の場)
現場で試せる裁量ある仕事の付与
1on1や360度評価を通じたフィードバックの仕組み
上司(部長層)との連携・サポート
などが挙げられています。
私が関わった企業では、新任課長向け研修を年2回実施していましたが、以前は「その日だけ盛り上がって終わり」という感覚がありました。
そこで、人事と一緒に「課長コミュニティ」を立ち上げ、月1回オンラインで90分の振り返り会を開催することにしました。
最初の回では、ある課長がこう話していました。
「部下が増えて、1on1の時間を確保しようと思うんですけど、日々の業務に追われて、気づいたら今月もできていませんでした」
それを聞いた別の課長が、「実は自分も同じです」と続き、チャット欄には「うちも」「わかる」が並びました。そこから、「1on1の時間をどう捻出するか」「何を話せばいいのか」をお互いに出し合い、翌月までに“1人につき1回以上実施する”という小さな目標を共有しました。
1年後、人事が簡易サーベイを取ったところ、「上司との1on1が役に立っている」と答えた部下の割合は、30%台から50%台に増えていました。大きな制度変更はしていません。ただ、「話していい場」と「小さなチャレンジ」を共有しただけです。ふとした瞬間、部下との何気ない会話に笑いが増えたと話してくれた課長もいました。
ケースによりますが、「学ぶ場」だけでなく、「試す場」「振り返る場」を設計しないと、管理職の育成力は安定して伸びません。
管理職の育成力を底上げする仕組みづくり
ステップ1 – 「管理職像」と必要スキルを言語化する
自社における「管理職の役割」を定義する
管理職育成の出発点は、「あなたの会社における管理職の役割」を具体的にすることです。
一般論ではなく、事業戦略・組織フェーズに合わせて、「何を期待するか」を明文化します。
管理職が育たない理由として、「管理職の役割が明確になっていない」「どんなスキルが必要なのかが共有されていない」といった点が挙げられています。
そこで、ある企業では、管理職の役割を以下のように整理しました。
事業の成果を出す(売上・利益・品質・生産性など)
メンバーの成長を支援する(育成・評価・キャリア支援)
組織文化をつくる(心理的安全性・働きやすさの向上)
管理職育成ガイドでは、「経営目標と育成方針を決める」「求める管理職像と必要なスキルを具体化する」ことが第一ステップだとされています。
私が実際やったときは、社長・部長・現場マネージャーを同じテーブルに座らせ、「今いる管理職のどこが良くて、どこが足りないか」を具体的なエピソードベースで出してもらいました。
「A部長のように、厳しいけど話は必ず聞いてくれる姿勢」「B課長のような、現場の温度感を経営にきちんと伝える力」…。その場で出てきた言葉をまとめていくと、「理想の管理職像」が少しずつ輪郭を帯びていきました。
管理職に求める「コンピテンシー」と「育成スキル」を整理する
役割が固まったら、次はそれをスキルに分解します。
管理職に必要とされるスキルとしては、一般的に次のようなものがあります。
マネジメントスキル(目標設定・進捗管理・優先順位付け)
コミュニケーションスキル(1on1・傾聴・フィードバック)
リーダーシップ(ビジョン提示・意思決定・巻き込み)
育成スキル(ティーチング・コーチング・OJT設計)
セルフマネジメント(メンタルケア・時間管理)
ある企業の管理職育成ガイドでは、「現状の管理職の能力を評価し、求める管理職像とのギャップを明確にしたうえで、短期・中期・長期の育成目標を設定する」プロセスが推奨されています。
私が関わったケースでは、「育成スキル」をさらに細かく分けて、チェックリスト化しました。
例えば、
新人・若手との1on1を月1回以上実施しているか
面談では、事実→感情→解釈→次の行動の順で話を聞いているか
フィードバックの際、“性格”ではなく“行動”にフォーカスしているか
などです。チェックリストにしてみると、「できているつもりだったけれど、実は抜けていたこと」が見えてきて、「次の面談から1つだけ試してみよう」という動機にもなりました。
ケースによりますが、「育成スキル」を抽象的にせず、具体的な行動レベルに落とすことが、育成力底上げの第一歩になります。
ステップ2 – 研修と現場経験を連動させる
外部研修で「共通言語」と「基本型」を揃える
管理職育成では、「基礎知識の習得は外部研修、実践的なスキル向上は社内育成」という使い分けが効果的だとされています。
外部研修のメリットは、最新の理論や他社事例を学べることと、「社内では言いにくい悩み」を安心して共有しやすいことです。
私も一度、他社の管理職と一緒に参加する研修に出たことがあります。休憩時間に、隣の会社の課長とこんな会話になりました。
「うちの部下たち、なかなか自分から動いてくれないんですよね」 「あ、それ、うちもです。つい全部自分で決めちゃって…」
その瞬間、「あ、これは自分の会社だけの問題じゃないんだ」と少し肩の力が抜けました。講義で習った「任せ方」のフレームワークを共有しながら、実際に自分たちのケースに当てはめて議論した時間は、今でも鮮明に覚えています。
管理職研修の目的は、「正解を教える」ことではなく、「考え方の軸」と「言語」を揃えることです。
例えば、1on1の型、フィードバックのフレームワーク、部下のタイプ別接し方など、“共通のものさし”があるだけで、組織内での対話が格段にしやすくなります。
プレ・マネジメント経験で「実際にやってみる」機会をつくる
管理職育成では、「昇格前にプレ・マネジメント経験を積ませる」ことが効果的な方法のひとつとされています。
課長や部長に昇格する前に、チームリーダーやサブリーダー、プロジェクトリーダーを経験してもらい、一部のマネジメント業務を任せるというやり方です。
ある企業では、「管理職候補者プログラム」として、次のような流れを取っていました。
候補者を公募・推薦で選出
半年間、2〜3人のメンバーを持つ小さなチームリーダーに任命
目標設定と週次ミーティング、簡易評価を担当
並行して、月1回のマネジメント勉強会とコーチングを実施
このプログラム後に正式に管理職に登用された人は、「いきなり肩書きだけ変わる」のではなく、「一度“リハーサル”を経験した安心感」があると言っていました。
一方で、「やってみてやっぱりマネジメントは向いていない」と感じた人は、無理に昇格を目指さず、専門職コースに進むという選択もできるようになっていました。
実は、私もプレ・マネジメントの経験がないまま管理職になったため、「最初の1年をこれでやり直せたら…」と思うことが何度もありました。部下の評価シートを前に、0.5刻みで悩みに悩み、エンターキーを押すだけで10分かかった日もあります。
ケースによりますが、「一足飛びの昇格」ではなく、「小さなマネジメント経験」を事前に設計することは、本人にとっても組織にとってもリスクヘッジになります。
1on1・360度評価・サーベイで「フィードバックの仕組み」を作る
管理職の育成力を高めるには、「自分のマネジメントがどう受け取られているか」を知ることが不可欠です。
管理職育成の実践例として、「360度評価を実施し、多角的な視点からフィードバックを行う」ことが紹介されています。
360度評価は一見ハードルが高く感じますが、簡易版として、
年1回、部下・同僚から「強み」と「改善ポイント」を一言ずつもらう
匿名アンケートで「上司との1on1満足度」「相談しやすさ」などを聞く
結果は本人と上位職が一緒に見て、次の行動計画を立てる
といった形でも十分に効果があります。
私がいるチームでも、一度アンケートを取ったことがあります。自由記述欄に、「相談するとき、いつも忙しそうで声をかけるのに勇気がいる」というコメントを見つけたとき、心臓が少しギュッとしました。
その日から、「忙しくても顔だけはちゃんと向ける」「“今は厳しいけど、何分後なら話せる”と伝える」を意識するようにしました。数か月後、部下から「最近、話しかけやすくなりました」と言われたとき、帰り道の足取りが少し軽くなったのを覚えています。
1on1の仕組み化やサーベイの活用は、「管理職本人の育成」にもなります。
フィードバックが“攻撃”ではなく“成長の材料”として扱われる文化があるほど、育成力は組織全体で底上げされていきます。
よくある質問(FAQ)
Q1.管理職の育成力は、個人の資質にどの程度左右されますか?
A1.影響はありますが、役割定義・研修・フィードバックなどの仕組み次第で、組織として底上げできます。資質任せにしない設計が重要です。「あの人だからできる」という属人性を残したままだと、後任の育成が難しくなるという副作用もあります。
Q2.管理職育成には、最低どれくらいの期間を見ればよいですか?
A2.昇格前後を含めて3年単位で考えるのが現実的です。半年〜1年単位の研修だけでは、行動変容は限定的になりがちです。短期で結果を求めず、中期視点で育成計画を組むことで、安定した成長カーブが描けます。
Q3.研修と現場経験、どちらを優先すべきですか?
A3.どちらも必要ですが、研修だけでは定着しないため、「研修で学ぶ→現場で試す→振り返る」をセットで設計することが重要です。研修後すぐに試せる小さな場を用意しておくと、学びがそのまま行動に移りやすくなります。
Q4.プレイヤー業務が多く、マネジメントに時間を割けない管理職が多いです。どうすべきですか?
A4.業務棚卸しと権限委譲で、マネジメント用の時間を意図的に確保する必要があります。プレイング比率が高すぎると、育成力はどうしても伸びにくくなります。「何を手放すか」を上位職と一緒に決めることが、現実的な突破口になります。
Q5.360度評価は、現場にストレスを与えませんか?
A5.運用次第です。評価より「学び」の位置づけを強調し、結果は本人と上位職だけで共有するなど、安心感を担保する設計が重要です。匿名性の担保と、ネガティブフィードバックの伝え方を事前に整えておくと、現場の不安は大きく軽減されます。
Q6.管理職候補がそもそも足りません。どう育成していけばよいですか?
A6.早めに候補者を見極め、プレ・マネジメント経験や役割を小さく与えていくことが有効です。「いきなり課長」ではなく、「チームリーダー→課長補佐→課長」と段階を踏む設計が望ましいです。早期から候補者プールを意識的に作っておくと、急な欠員にも対応しやすくなります。
Q7.中小企業でも、ここまでの仕組みを整える必要はありますか?
A7.中小企業ほど、管理職1人の影響が大きいため重要です。すべてを一度にではなく、「1職種・1拠点からの試行」でも十分効果があります。小規模ゆえに変化を全社に波及させやすいというメリットもあるので、むしろチャンスと捉えてください。
まとめ:管理職の育成力は「個人戦」から「組織戦」へ
管理職の育成力に差が出る主な理由は、「役割の曖昧さ」「育成スキルを学ぶ機会の不足」「学びを試し・振り返る場の欠如」の3つです。
底上げのためには、「自社の管理職像と必要スキルを言語化する → 研修とプレ・マネジメント経験を連動させる → 1on1や360度評価・コミュニティで継続的にフィードバックする」という三層の仕組みづくりが効果的です。
一部の“できる管理職”に頼り続けるのではなく、「誰が管理職になっても、一定レベル以上の育成力を発揮できる組織」を目指すことで、部下の成長スピードと定着率、そして組織全体の生産性がじわじわと変わっていきます。
こういう状態なら、今すぐ「管理職の育成力を組織で支える仕組みづくり」に着手すべきです。
管理職によって、部下の成長スピードや離職率に大きな差が出ている
昇格させたは良いものの、「マネジメントが負担だ」と感じている管理職が多い
管理職研修をやっているのに、現場での行動変容があまり見えない
逆に、「これから本格的に管理職育成を始めたい」という段階であれば、今が設計のベストタイミングです。迷っているなら、まずは次の3つのうち、どれか1つから始めてみてください。
自社の「理想の管理職像」をA4一枚で言語化する
管理職候補にプレ・マネジメント役割(小さなチームリーダー)を任せてみる
全管理職を対象に、月1回のショート1on1実施をルール化する
あなたの会社では、まずどの層(新任、ミドル、部長級)から、管理職の育成力を底上げする仕組みづくりを始めたいですか?




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