管理職が育たない原因とは?育成を失敗しないポイント
- HUGME代表 高橋

- 6月5日
- 読了時間: 12分
「抜擢の瞬間」だけに頼らない、管理職育成を仕組みに変えるための実践指針
管理職が育たない組織は、「管理職本人の資質」が原因ではなく、「任せ方・育て方・場の設計」がずれています。結論として、管理職育成をうまく回すには、「いつ・誰を・何段階で・誰の役割で育てるか」を決め、現場の仕事と一体で設計し直すことが欠かせません。
【この記事のポイント】
要点1|昇格条件があいまいなまま「年次と実績」で上げてしまっている
正直なところ、「管理職が弱い」と言われる会社ほど、昇格の条件や任せ方があいまいで、「とりあえず年次と実績で上げる」運用になっています。
要点2|“準備なし・段階なし・フォロー薄め”の任せ方が最大のボトルネック
実は、「プレーヤーとしては優秀だけど、マネジメントは初挑戦」という人を、“準備なし・段階なし・フォロー薄め”で一気に現場の責任者にしていることが、育たない一番のボトルネックになっているケースが多いです。
要点3|候補段階からの経験・昇格前後1年の設計・三者の役割分担が鍵
失敗しないためには、「管理職候補の段階から経験を積ませる」「昇格前後1年の育成設計を決める」「経営・人事・現場の役割を明確にする」という3つを押さえることが重要です。
この記事の結論
結論1|抜擢の前後1〜2年のプロセスを設計する
一言で言うと「管理職が育たないのは、“抜擢の瞬間”だけに注目しすぎて、その前後1〜2年の育成プロセスが設計されていないから」です。
結論2|プレーヤーの成果と管理職に必要な行動を分けて定義する
最も重要なのは、「プレーヤーとしての成果」と「管理職に必要な行動・思考」をきちんと分けて定義し、昇格前から“小さなマネジメント経験”を積ませておくことです。
結論3|昇格前の経験・昇格後の支援・引き返し方を会社として用意する
失敗しないためには、「管理職に上げる前に何を経験させるのか」「上げたあとの1年でどんな支援をするのか」「その役割に合わなかったときの“引き返し方”をどう決めるか」を、会社として用意しておくことが欠かせません。
管理職が育たない主な原因
原因1|プレーヤーとしての実績だけで選んでいる
よくあるのが、昇格条件がこうなっているケースです。
売上や成果が3期連続で上位
在籍年数が十分
大きなトラブルも起こしていない
つまり、「個人として優秀=管理職にふさわしい」とみなしてしまうパターンです。
私が以前ある営業組織をお手伝いしたとき、こんな声を聞きました。
「実は、プレーヤーとしては社内トップクラスのエースを課長に上げたんですが、部下がどんどん疲れた顔になっていって…。 本人も、“なんでみんな自分と同じようにできないんだろう”と苛立っていました。」
現場を覗いてみると、彼はこういうスタイルでした。
部下の案件を次々と自分が巻き取る
「自分が行った方が早い」と判断してしまう
フィードバックは“できていない点の指摘”が中心
正直なところ、「できる人が教えるのが上手い」とは限りません。プレーヤーとして個人の成果を最大化するスキルと、チーム全体の成果を引き出すスキルは別物だからです。むしろ、自分のやり方が確立しているプレーヤーほど、その型を部下にも押し付けてしまいやすいというリスクすらあります。
【対策の方向性】
昇格基準に「部下育成」「チームへの貢献」「他部署との連携」といった“マネジメント行動”を必ず入れる
具体的には、
部下の目標達成率
後輩から「相談したい相手」に名前が挙がる頻度
チームとしての成果への貢献度
などを見ていく
「個人成績」と「マネジメント貢献」のウェイトを意識して可視化する
原因2|任せ方が「いきなり全部」になっている
よくあるのが、ある日突然こう告げるパターンです。
「来月から、君がこのチームのマネージャーね」
「部下は3人増えるけど、よろしく」
準備期間も、引き継ぎも、サポート役もなく、「肩書きだけ変わる」状態。
ある新任管理職が、昇格から3か月経った頃に漏らしたひと言をよく覚えています。
「正直なところ、何にどこまで責任を持てばいいのかがよく分からないまま、毎日“目の前の火消し”に追われ続けています。」
彼は、
自分の案件
部下の案件
チーム全体の数字
組織からの新しい施策
に一気に飲み込まれていました。 結果として、
部下への1on1は先送り
問題が起きるたびに自分が出て行く
「自分がいないと回らないチーム」ができあがる
という悪循環に。新しい役割への適応には学習期間が必要なのに、その期間を確保しないまま全責任を背負わせると、本人は短期的な業務処理に追われ、マネジメントのスキルを伸ばす余裕がなくなってしまいます。
【対策の方向性】
管理職の任せ方を「3〜4段階」に分ける
例:係長・サブリーダーとして一部の役割を任せる
例:少人数のチーム(1〜3人)で試す
例:フルマネジメントに移行する
段階ごとに「任せる範囲」「上司が一緒に持つ責任」「サポートの頻度」を整理しておく
各段階の終わりに、本人と上司で“次に進むかどうか”を対話する場をつくる
原因3|「育て方」が人任せ・現場任せになっている
管理職育成がうまくいかない会社ほど、こんな構図になりがちです。
経営:管理職層のレベルにモヤモヤしている
人事:「管理職研修」を入れて対応したつもり
現場上司:自分も育てられた記憶が薄く、「見て覚えるスタイル」を踏襲
ある企業の部長と話していたとき、こんなセリフが出てきました。
「実は、自分が課長になったときも、“気づいたらなっていた”感覚で…。 正直、管理職の育て方を体系立てて教わったことがないんです。」
よくあるのが、
管理職向け研修は用意しているが、
日常の1on1やフィードバックの設計は各自に任せきり
という状態です。「自分も育てられていない」上司が、後輩を体系立てて育てるのは難しい。だからこそ、属人的な経験に頼るのではなく、組織として“育て方の型”を共有することが必要になります。
【対策の方向性】
「管理職向けの育成ステップ」を明文化する
昇格前1年〜昇格後1年で、何をどの順に経験させるか
人事・経営が「育成の型(1on1のフレーム、評価面談の進め方、部下育成の基本)」を用意し、“やり方の土台”を渡す
管理職同士が学び合える横の場(勉強会・ケース共有)を意図的に設ける
管理職を育てるための具体的な対策
対策1|管理職像と育成ステップを「行動レベル」で定義する
まずは、「理想の管理職像」を、“抽象的な言葉”から“具体行動”に落とし込むことが出発点です。
【よくある言葉】
主体性がある
部下を活かせる
戦略的に考えられる
これを、そのまま現場に渡しても動きようがありません。
【具体化の例】
主体性がある管理職=
部門の課題を月1回は自ら提起し、打ち手の案を3つ以上出す
部下を活かせる管理職=
部下の強み・弱みを言語化して説明できる
月1回の1on1で、「任せる範囲」を見直している
戦略的に考えられる管理職=
半期の目標に対して、「今月やめること・増やすこと」をチームで共有している
ある会社で、この“行動レベルへの具体化ワーク”を役員と一緒にやったとき、経営陣の一人がこう言いました。
「実は、今まで“いい管理職”のイメージは各自バラバラだったのかもしれません。 こうして行動で書き出してみると、ようやく現場に渡せる“ものさし”になった感覚があります。」
行動レベルに落とすメリットは、評価のしやすさだけではありません。本人にとっても「何ができていれば認められるのか」が明確になり、努力の方向に迷いが減るという効果があります。
【行動ポイント】
「理想の管理職像」を3〜5項目に絞り、それぞれを“観察できる行動”に言い換える
その行動を、評価項目や昇格基準にも反映させる
定期的に経営層と人事で「ものさし」を見直す機会を設ける
対策2|管理職候補に“小さなマネジメント経験”を積ませる
いきなりフルマネジメントを任せず、前段階の経験を意図的に用意します。
【小さなマネジメント経験の例】
プロジェクトリーダーを任せる(期限付き・メンバー3〜5人程度)
新人のOJT担当として、「育成計画→実行→振り返り」を一通り経験させる
チーム内の改善テーマ(例:会議の短縮・資料の標準化)の責任者にする
私が関わった企業で、課長候補を数名ピックアップし、「半年間のプロジェクトリーダー経験」を必須にしたケースがあります。 そのとき、ある候補者がこう話してくれました。
「正直なところ、今までは“自分の数字だけ”見ていればよかったんです。 プロジェクトでメンバーの進捗を見たり、モチベーションの波を感じたりする中で、“管理職ってこういう難しさがあるのか”と身をもって知りました。」
結果的に、
昇格に進む人
「自分は専門職の道を極めたい」と別の道を選ぶ人
が分かれましたが、それはそれで組織にとって健全な選択になりました。早い段階で“管理職という役割の現実”に触れる機会を持てたからこそ、本人がキャリアを納得感を持って選べるようになります。
【行動ポイント】
「管理職候補向けの経験リスト」を作り、昇格前1〜2年で全員に最低2〜3個は経験させる
経験後には必ず「自分にとって管理職という役割はどうか」を対話する場を設ける
経験を通じての気づきを、本人の言葉でメモに残しておく
対策3|昇格後1年の“伴走設計”をつくる
管理職に上げたあと、最初の1年が勝負どころです。 ここで“放置”すると、本人も部下も疲弊します。
【伴走の仕組み例】
昇格後3か月・6か月・12か月の節目に、「上司×本人×人事」の三者面談を実施
テーマ:
うまくいっていること
苦戦していること
権限・裁量の調整が必要なこと
月1回の「新任管理職勉強会」
講義中心ではなく、「最近のリアルな悩み」を持ち寄り、他社・他部署の管理職と一緒にケースを共有
ある企業で、新任課長向けにこの“伴走設計”を導入したところ、1年後にこんな変化が見られました。
「管理職を辞めたい」と口にする人が、ほぼゼロになった
部下からの「うちの上司、少しずつ良くなってきた気がする」という声が増えた
新任課長の一人は、こう振り返っていました。
「実は、最初の頃は毎日が手探りで、“これでいいのか?”と不安だらけでした。 三者面談や勉強会で、他の管理職の失敗談や試行錯誤を聞けたことで、“自分だけじゃないんだ”と少し肩の力が抜けました。」
新任管理職にとって、「自分だけが苦しんでいるわけではない」と感じられる場の存在は、想像以上に大きな支えになります。同じ立場の仲間と弱音を共有できることが、結果として自走力を高めていきます。
【行動ポイント】
昇格とセットで、「1年間のフォロープラン(面談・勉強会・チェックポイント)」を本人に渡す
上司にも、「この1年は“育てるつもりで見てください”」と明示する
フォローの過程で出てきた課題を、人事の制度改善にも還元する
よくある質問(FAQ)
Q1:管理職候補の見極めは、いつから始めるべきですか?
A1:目安としては、昇格の1〜2年前からです。この期間に“小さなマネジメント経験”を意図的に積ませると、本人の適性や意欲が見えやすくなります。早めに観察を始めるほど、判断材料が蓄積されるので、昇格時の納得感も高まります。
Q2:プレーヤーとして優秀だが、マネジメントには向いていない人はどう扱うべき?
A2:無理に管理職にせず、「スペシャリスト」「プロフェッショナル職」といった別のキャリアパスを用意するのが、本人と組織の双方にとって健全です。複線型のキャリアパスが整備されていれば、「昇格しないこと=後退」という空気を避けられます。
Q3:管理職研修だけで、育成を進めることはできますか?
A3:研修はあくまで“きっかけ”です。日々の仕事の中での任せ方・振り返り・評価と組み合わせて初めて“育成プロセス”として機能します。研修単体に過剰な期待をかけると、結果として「研修=意味がない」という評価につながりやすいので注意が必要です。
Q4:管理職がなかなか部下育成に時間を割いてくれません。どうすれば?
A4:評価や目標設定の中に「部下育成」を正式な項目として入れ、育成活動そのものを評価する仕組みにすることで、優先順位が上がりやすくなります。「数字に追われているから育成は後回し」が常態化しないよう、組織として明示的にメッセージを出すことが必要です。
Q5:小さな組織でも、ここまで設計する必要がありますか?
A5:規模に応じてシンプルにできますが、「管理職像の定義」「昇格前の経験」「昇格後のフォロー」の3つだけは、人数が少ない会社ほど意識的にやった方が効果があります。少人数だからこそ、一人の管理職の出来が組織全体の雰囲気に直結するからです。
Q6:管理職本人に、自覚と覚悟を持ってもらうには?
A6:昇格前後の面談で、「この役割は何を背負うポジションか」「何を手放す必要があるか」をしっかり対話し、“メリットだけでない現実”も含めて共有することが大切です。期待だけを伝えるのではなく、責任の重さも合わせて伝える誠実さが信頼につながります。
Q7:今いる管理職層のレベルにばらつきがあります。どこから手をつけるべき?
A7:まずは、「理想の管理職像」と「期待する行動」を全員で言語化し、そのうえで共通の育成テーマ(例:1on1・部下育成・チームマネジメント)を決めていくのが現実的です。一気に全領域の底上げを狙うより、テーマを絞って成功体験を積み重ねる方が長続きします。
Q8:管理職として“合わなかった人”を元のポジションに戻すのはありですか?
A8:ありです。ただし、“降格”としてネガティブに扱うのではなく、「別の強みの活かし方を選ぶキャリアチェンジ」として、事前に制度として用意しておくことが重要です。あらかじめ“引き返せる道”が用意されていることが、新任管理職の心理的安全性にもつながります。
Q9:評価と育成を連動させると、プレッシャーばかり強くなりませんか?
A9:数字だけを詰めるとそうなりますが、「行動の変化」「部下の成長」「チームへの貢献」も評価軸に入れることで、“育成しようとする姿勢”もきちんと評価できます。プロセスの努力もちゃんと見ているという姿勢が、長期的な信頼関係を生みます。
まとめ
管理職が育たない本当の理由は、「人材の質」ではなく、「管理職像のあいまいさ」「昇格前後の育成ステップの欠如」「任せっぱなしの運用」にあります。
正直なところ、派手な“管理職研修”を1本増やすよりも、「どんな管理職を育てたいかを行動レベルで定義する」「候補者に小さなマネジメント経験を積ませる」「昇格後1年の伴走設計をつくる」方が、結果として育成の成功確率は高まります。
実は、「今いる管理職の中からロールモデルとなる行動を洗い出す」「昇格前後2年を1つの育成プロジェクトと見なす」「管理職本人とも“向き・不向き”を対話する」だけでも、管理職育成は“属人的な運と根性”から“組織として再現性のある仕組み”へと変わっていきます。
こういう状態なら、今すぐ管理職育成の設計を見直すべきです。
管理職層の“当たり外れ”が大きく、配属ガチャのような空気になっている
昇格させたはいいが、本人も部下も疲弊していて、「次の候補」がなかなか手を挙げない
経営として「管理職を強化したい」と思っているが、どこから手をつけるべきか迷っている
この状態ならまだ間に合います。 まずは「今の管理職像(こうなってほしい)」と「一番詰まっているポイント(選抜・任せ方・フォローなど)」を一つずつ教えてもらえれば、そこから御社向けの“管理職育成の設計図”を一緒に描いていけます。




コメント