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働きやすい職場とは?企業が整えるべきポイント

“1日の感情の波”を楽にすることから始める、定着する職場のつくり方

働きやすい職場づくりは、「福利厚生の充実」より先に「日々の1時間の過ごし方を楽にすること」から始めるべきです。結論として、仕事の見通しが立つ・人間関係で消耗しない・ライフイベントが来ても働き方を調整できる、この3つを具体的な仕組みに落とし込んだ職場ほど、定着率とパフォーマンスが安定します。

【この記事のポイント】

要点1|カタログ上の“働きやすさ”と日常で体感する“働きやすさ”は別物

正直なところ、「うちは働きやすい会社です」と採用サイトに書いてあっても、夜のリビングでパソコンを開いたまま、「退職 言い出せない」「転職サイト おすすめ」と検索している人は少なくありません。カタログ上の“働きやすさ”と、日常で体感している“働きやすさ”は、別物です。

要点2|土台は「仕事量」「相談できる人」「働き方の調整可能性」の3点

実は、働きやすさの土台は、仕事の量と優先順位が明確であること・安心して相談できる人がいること・生活の変化にあわせて働き方を調整できること、の3点です。オフィスのきれいさや福利厚生は“プラスアルファ”であって、核ではありません。

要点3|「1日の動きと感情のアップダウン」から邪魔な要因を一つずつ減らす

失敗しないためには、「働きやすい職場に“見せる”」前に、「社員の1日の動きと感情のアップダウンを観察し、邪魔をしている要因を一つずつ減らす」ことが重要です。制度を増やす前に、会議の持ち方、フィードバックの頻度、上司の声かけから整える方が現実的です。

この記事の結論

結論1|“安心して相談できる関係”と“無理のない仕事設計”が両輪

一言で言うと「働きやすい職場とは、“安心して相談できる関係性”と“無理のない仕事設計”があり、ライフイベントが来てもキャリアを諦めなくて済む環境」です。

結論2|社員の声とデータをもとに自社なりの基準を言語化する

最も重要なのは、「何をもって働きやすいとするか」を企業側が一方的に決めるのではなく、社員の声とデータをもとに自社なりの基準を言語化し、それを施策と運用に落とし込むことです。

結論3|「仕事量」「対話の質」「時間と場所の柔軟性」から順に手をつける

失敗しないためには、「福利厚生の数」や「オシャレなオフィス」の前に、「仕事量と優先順位の明確さ」「上司との対話の質」「時間と場所の柔軟性」という3つの土台から順番に手をつけることが欠かせません。

働きやすさを決める3つの土台

1. 仕事の量と優先順位が「見える」こと

働きにくさの正体は、残業時間そのものよりも、「何に追われているのか分からない感覚」であることが多いです。

よくあるのが、こんな夜の光景です。

  • タスク管理ツールとメールボックスを何度も行き来する

  • スマホのメモに「やることリスト」を書いたのに、翌日には別のリストをつくっている

  • 「今日は何をやればOKなのか」が分からず、帰り際に小さくため息が出る

私自身、フルリモートのチームで働いていたとき、「このままいくと、常に未完了感を抱えたまま寝る生活になる」と感じた時期がありました。 当時、チームで行ったのは、たった3つです。

  1. タスクを「今日やる・今週やる・今月以降」に分ける

  2. 毎朝15分だけ、“今日の3つ”を共有する

  3. 週の真ん中で、「今週やらないこと」を決める時間を設ける

これだけで、メンバーのチャットに現れる言葉が変わりました。

「今日はもうこれでOK、と言えるラインが見えてきました。」

正直なところ、働きやすさは“残業ゼロ”では測れません。 「今日、自分はやるべきことをやった」と言える感覚があるかどうか。 そのために、仕事の量と優先順位が“見える化”されていることが土台になります。終わりのない仕事の中に、自分なりの“区切り”を見つけられる状態こそが、心の余裕を生みます。

【よくある失敗】

  • 「忙しい」は共有されているが、何がどれくらい積み上がっているかが共有されていない

  • 目標管理制度はあるのに、日々のタスクとのつながりが見えない

【ここでできる行動】

  • チームで「今日の3つ」を毎朝共有する短い時間をつくる

  • 「今週はやらないこと」を決めるミーティングを週1回入れる

  • 期日と優先順位を、誰が見ても分かる場所に置く

2. 人間関係で「余計な消耗」をしないこと

働きやすさの2つ目は、「人間関係でのストレスが最小限であること」です。

“最小限”と言ったのは、まったくゼロにすることは現実的ではないからです。 ただ、よくあるのがこんな行動です。

  • 送信前のチャット文面を、何度も書き直す

  • 会議が終わったあと、別のメンバーと「さっきの発言、大丈夫だったかな」と確認し合う

  • 上司の機嫌を読むために、朝の一言に神経を尖らせてしまう

私が以前関わったチームで、「毎朝、上司の表情を見てから話しかけるか決めている」という声を、複数のメンバーから聞いたことがあります。 その上司は、仕事のスキルは高く、成果も出していました。 ただ、表情や言葉がきつくなりがちな日とそうでない日の差が大きかった。

ここで行ったのは、「上司の1on1トレーニング」と「感情の言語化」です。

  • 上司が、自分のコンディションを短く言葉にしてから会議に入る

    • 例:「今日はちょっとタスクが詰まり気味だけど、話す時間はちゃんととります。」

  • メンバーの側も、「どう感じたか」を1on1で率直に話す時間を確保する

最初はぎこちなかったものの、3か月くらい続けると、チャットの文末に「ありがとうございます!」が義務感で付いている感じが減りました。一方的に振る舞いを変えるのではなく、お互いに状態を共有し合うことで、見えない緊張感が少しずつ溶けていきます。

【よくある失敗】

  • 「うちは風通しがいい」と言いつつ、実際には“上司の機嫌”に左右される

  • 1on1は形だけで、「最近どう?」の一言で終わる

【ここでできる行動】

  • 上司自身が、自分のコンディションを一言共有する習慣をつくる

  • 1on1で「事実(何があったか)」と「感情(どう感じたか)」を分けて話す時間をとる

  • お互いの“波”を許容する文化を、会議の冒頭の挨拶から育てる

3. ライフイベントがあっても「働き方を調整できる」こと

働きやすさの3つ目は、ライフステージの変化に対して、会社側がどれだけ柔軟に応じられるかです。

  • 子どもの誕生や病気

  • 親の介護

  • 自身の体調不良や、メンタルの不調

実は、ここを“人生の例外”として扱うか、“前提”として扱うかで、働きやすさの印象は決定的に変わります。

私の知人で、親の介護が急に必要になった人がいます。 最初は、毎週末に帰省していましたが、それも難しくなり、平日に通院の付き添いが必要になりました。 そのときの上司とのやり取りを聞いたとき、印象に残った一言があります。

部下:「通院の付き添いで、平日の午前中だけ抜ける日が増えそうです。」 上司:「仕事は“あなたじゃないとできないこと”だけ一緒に整理して、あとはチームでカバーしよう。」

上司は、「大変だね」と共感するだけで終わらず、

  • どの業務が本人必須なのか

  • どこから先はチームで分担できるのか

を一緒に棚卸ししました。

その結果、その人はフルリモート+時間調整をしながら、介護と仕事を両立し、年次評価でもきちんと成果を認められていました。「人生のすべての場面で、仕事だけがあるわけじゃない」という前提に立てるかどうかが、長期的な定着を左右します。

【よくある失敗】

  • 制度としては「時短勤務」や「在宅勤務」があるが、実際に使う人はほとんどいない

  • 「使ってもいいけれど、今は忙しいから」と言われ、使うタイミングを永遠に失う

【ここでできる行動】

  • 毎年の面談で、「ライフイベントが起きたときの働き方」を事前に話題にする

  • 実際に両立した事例を社内で共有し、「使っても評価される」ロールモデルを見せる

  • ライフイベントを“例外”ではなく“通常”として扱う言葉づかいを意識する

働きやすい職場づくりの具体的な進め方

ステップ1|“働きやすさの定義”を自社なりに言語化する

まず必要なのは、「働きやすさ」の言葉を、自社なりに定義し直すことです。

よくあるのが、「働きやすい=残業が少ない」「働きやすい=福利厚生が手厚い」という短絡的なイメージ。 もちろん、それも要素の一つですが、全てではありません。

【自社の働きやすさを定義する問い】

  • うちの会社で“働きやすい”と感じている人は、どんな状態にあるか?

  • 逆に、“働きづらさ”を感じて辞めた人は、何が理由だったか?

  • 経営として大事にしたい「働きやすさの軸」は何か?

ここを曖昧にしたまま施策を増やすと、

  • フレックスもある

  • リモートも許可

  • 福利厚生も増えている

のに、「なんとなくしんどい」という声が消えません。

ステップとしては、

  1. 経営・人事・現場の代表で、「働きやすさの要素」を出し切る

  2. 過去1〜2年の退職理由やエンゲージメント調査の結果を眺める

  3. 「うちにとっての働きやすさは、ここを大事にすることだ」と3〜5つの軸にまとめる

この作業を一度やっておくと、今後の施策やメッセージがぶれにくくなります。働きやすさの定義は、流行りのキーワードに流されるのではなく、自社の文脈で定めることが大切です。

ステップ2|“1日の動き”と“感情の波”を可視化する

次に、「実際の1日」を見ていきます。

私がよく現場でやるのが、「1日の仕事と感情のグラフ化」です。

  • 朝起きてから寝るまでを時間軸に取る

  • 仕事のタスクや会議、移動時間を書き込む

  • そのときの感情(楽・普通・しんどい)を線で描いてもらう

これを数名分見ていくと、共通の“谷”が見えてきます。

  • 毎朝の全体朝礼のあと、感情のラインがぐっと下がる

  • 夕方17〜18時に、会議が詰め込まれている日だけ下がる

  • 月末にだけ「混乱」のメモが増える

正直なところ、アンケートよりも、この「感情の波」の方が、働きやすさの改善ポイントを教えてくれます。

【よくある気づき】

  • 会議の時間と頻度が、思っていた以上にストレス源になっている

  • 「なんとなくの頼まれごと」が、じわじわとエネルギーを削っている

数字には現れないけれど、確実にエネルギーを削っている要素が、感情の波には正直に表れます。

【ここでできる行動】

  • 代表的な職種ごとに、1日のタイムラインと感情の波を描き、チームで共有する

  • 共通して“谷”になっている時間帯の仕事やルールを見直す

  • 改善後にもう一度同じワークをして、変化を確認する

ステップ3|“すぐに変えられること”から優先して手をつける

働きやすさを整えると言うと、「制度の見直し」「賃金の改定」のように、大きなテーマに意識が向きがちです。

もちろん重要ですが、時間もコストもかかります。 一方で、「今月から変えられること」も、少なくありません。

【すぐに変えられる例】

  • 会議を「開始5分で目的確認」「終了5分前に決定事項とNextを確認」するルールにする

  • 月1回の1on1で、「最近のコンディション」「負荷のかかっている仕事」を必ず聞く

  • チャットやメールの返信に、「即レスが必要なもの」「24時間以内でOKなもの」のラベルをつける

私が関わったあるチームでは、「23時以降のチャットは、翌朝対応でOK」とトップが明言しただけで、メンバーの睡眠時間と表情が目に見えて変わりました。 「見えないプレッシャー」に名前をつけてルールにするだけでも、働きやすさは動きます。何となく漂っていた“暗黙の期待”を、はっきりとした“明示的なルール”に置き換えることが、空気を変える最大の近道です。

【よくある失敗】

  • いきなり“働き方改革プロジェクト”を立ち上げ、大掛かりにしすぎる

  • 現場の小さな痛みを無視して、大きな制度だけをいじる

【ここでできる行動】

  • 「今月から変えられること」「半年かかること」「1年以上かかること」に分ける

  • まずは「今月から変えられること」をチーム単位で3つ決めて試す

  • 変えた結果を、1〜2か月後にチームで振り返る

よくある質問(FAQ)

Q1:働きやすさと生産性は両立できますか?

A1:両立は可能ですが、単に負荷を下げるだけでは生産性は上がりません。「無駄な負荷を減らし、価値の高い仕事に集中できる環境」をつくることが鍵です。働きやすさは生産性の敵ではなく、むしろ前提条件として捉える視点が必要です。

Q2:小さな会社でも、ここまでやる必要がありますか?

A2:人数が少ない会社ほど、1人のコンディションが事業に与える影響が大きいです。全部でなくても、「1日の感情の波を見て、すぐ変えられることを1つ変える」だけでも効果が出やすくなります。少人数だからこそ、丁寧に向き合える強みもあります。

Q3:リモートワークと出社、どちらが働きやすいですか?

A3:ケースによりますが、「業務の特性」「メンバーの状況」「チームのコミュニケーションの仕方」によってベストは変わります。どちらかに固定するより、選択肢を持たせる方が満足度は高まりやすいです。一律のルールよりも、選べる柔軟さを設計することが大切です。

Q4:福利厚生と働きやすさの関係は?

A4:福利厚生は“プラスアルファ”です。もちろん重要ですが、仕事量・人間関係・働き方の柔軟性といった土台が整っていないと、恩恵を感じづらくなります。土台ができてはじめて、福利厚生の価値が実感できるようになります。

Q5:エンゲージメントサーベイを取れば、働きやすさは分かりますか?

A5:方向性の把握には役立ちますが、それだけでは不十分です。サーベイ結果をもとに「1日の動き」「具体的な場面」で何が起きているかを掘ることが必要です。数字と現場の声、両方を組み合わせて初めて立体的な姿が見えてきます。

Q6:働きやすさを評価指標に入れるべきでしょうか?

A6:定着率、離職理由、エンゲージメントスコア、健康指標などを経営の指標に含める企業も増えています。ただし、数字だけ見るのではなく、定期的な対話とセットで扱うことが大切です。指標は対話のきっかけ、と捉えるのが健全な使い方です。

Q7:経営陣が“成果ファースト”の考え方のとき、どう進めれば?

A7:働きやすさが成果にどうつながるか、具体的な事例と数字で示すのが有効です。離職による採用・育成コストや、健康問題によるパフォーマンス低下など、“損失”の観点から話すと届きやすくなります。経営の言葉で翻訳することが、合意形成の近道です。

Q8:メンバーの「わがまま」と働きやすさの境目が分かりません。

A8:会社として大事にする価値観やルールを明確にし、その中での柔軟性は最大限認める、というスタンスが現実的です。「どこまでが会社として守りたいラインか」を先に決めておくと判断しやすくなります。境目を決めること自体が、健全な働きやすさを支える土台になります。

Q9:何から改善すればいいか分からないときは?

A9:「退職者がどこでしんどくなっていたか」「現場のメンバーが1日のどこで一番疲れているか」からヒントを探すと、優先順位が見えやすくなります。痛みのある場所が、改善の最大の入り口です。

まとめ

働きやすい職場の本質は、「仕事の見通しが立つ」「人間関係での余計な消耗が少ない」「ライフイベントがあっても働き方を調整できる」という3つの土台にあります。

正直なところ、制度やオフィス環境だけを整えても、“1日の感情の波”が楽にならなければ、働きやすさは実感されません。実は、「働きやすさの定義を自社で言語化する」「1日の動きと感情を可視化する」「今月から変えられることに手をつける」という地味なステップが、一番効きます。

まずは、あなたの組織で「一番しんどくなりがちな時間帯やシーン」をメンバーと一緒に洗い出し、その部分に対してルールやコミュニケーションを見直すところから始めてみてください。その小さな一歩が、社員が「ここなら続けられる」と感じる環境づくりの土台になります。

いまのあなたの職場で一番先に見直したいと感じているのは、「仕事量と優先順位の見える化」「上司との対話や人間関係」「ライフイベントに応じた働き方の柔軟性」のどれに一番近そうでしょうか?

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