人材育成がうまくいかない原因は?よくある失敗と対策方法
- HUGME代表 高橋

- 6月2日
- 読了時間: 12分
「育てているつもり」で止まらないために、組織が見直すべき育成の土台
人材育成がうまくいかない組織は、「教育の量」が足りないのではなく、「育成の目的・役割分担・現場の設計」が噛み合っていません。結論として、人材育成を機能させるには、「どんな人材を何年でどう育てるか」を言語化し、経営・人事・現場がそれぞれの役割を明確にしたうえで、日々のマネジメントと一体で設計し直すことが不可欠です。
【この記事のポイント】
要点1|「研修・OJT・評価制度」がバラバラに見えていることが本質的な問題
正直なところ、多くの会社は「研修」「OJT」「評価制度」は用意しているのに、それらのつながりが弱く、現場から見ると“バラバラの取り組みの寄せ集め”に見えています。
要点2|「ゴールの曖昧さ・人事任せ・現場の時間不足」が同時に起きている
実は、人材育成が機能しない現場では、「育成のゴールが曖昧」「育成の責任が人事に丸投げ」「現場の忙しさで“教える時間”が後回し」が同時に起きているケースがほとんどです。
要点3|土台となる3つの設計を整えることが先決
失敗しないためには、「育てたい状態の言語化」「育成プロセスを3〜4段階に分解」「日々の1on1やフィードバックを“育成の一部”として再設計する」ことが重要です。
この記事の結論
結論1|目的と役割を整理し直すことが先決
一言で言うと「人材育成が機能しないのは、“育成の目的と役割”が曖昧なまま仕組みだけ増やしているからであり、まず“どんな人材をいつまでに・誰が・どう育てるか”を整理し直すことが先決」です。
結論2|経営・人事・現場の三者の役割分担をはっきりさせる
最も重要なのは、「人事が制度と場をつくり、現場が日々の行動とフィードバックで育成を進め、経営がその方向性と優先順位を示す」という“三者の役割分担”をはっきりさせることです。
結論3|育成は「配属〜評価〜異動」までの一連の流れ全体
失敗しないためには、「育成は研修のことではなく、“配属〜評価〜異動”までの一連の流れ全体だ」という前提に立ち、現場のマネジメントとセットで設計することが欠かせません。
人材育成が機能しない主な原因
原因1|「どんな人材を育てたいか」が曖昧なままスタートしている
よくあるのが、経営陣の頭の中には“理想の人材像”があるのに、現場にはこういう言葉しか降りていない状態です。
「自律的に動ける人材を育てたい」
「主体性のある若手を増やしたい」
正直なところ、これでは現場のマネージャーは「結局、何をどう育てればいいのか」が分かりません。
私は以前、ある企業の部長にヒアリングしたとき、こんな会話になりました。
私:「理想の若手像って、どんなイメージですか?」 部長:「そうですね…。主体的に提案してくれる人、でしょうか。」 私:「“主体的に”って、現場では何をしている人だと評価していますか?」 部長:「実は、そこまでは…うまく言語化できていないです。」
ここから、現場ごとに“理想の若手”のイメージがバラバラだということが見えてきました。同じ会社の中でも、部署や上司が変われば「育って欲しい姿」が違っているため、若手は配属先によって求められるものが変わり、結果として「どこに合わせて頑張ればよいのか」が見えづらくなっていきます。
【改善のヒント】
「理想の人材像」を、行動レベルの言葉に落とす
例:会議で月1回以上、自分から提案をする
例:上司に相談する前に、選択肢を2つ以上考えてから持ってくる
この“行動の定義”を全マネージャーで共有し、「これができていたら“育った”と言える」という共通認識を持つ
抽象語を使うときは、必ず「で、それは現場の何の行動を指すのか」をセットで言語化するルールにする
原因2|育成の責任が「人事任せ」になっている
人材育成がうまくいかない会社ほど、こんな構図になりがちです。
経営:「人材が育っていない。もっと教育を強化してほしい。」
人事:「研修は増やした。あとは現場で実践してほしい。」
現場:「正直、忙しくて人材育成どころじゃない。」
よくあるのが、
育成計画や研修企画は人事が作る
現場は「与えられたもの」に乗るだけ
というパターンです。
私は、ある企業の管理職研修で、冒頭にこんな質問をしました。
「この会社で“部下育成の最終責任”は誰にありますか?」
沈黙のあと、課長の一人が小さな声で言いました。
「…人事部じゃないんですか?」
この瞬間、会場の空気が少しザワっと揺れました。 他の参加者は、「そう思っていたけど、口に出すのはためらっていた」表情でした。育成は本来、毎日部下と顔を合わせるラインマネージャーが主役であるはずなのに、いつの間にか「研修=人事の仕事」「現場=業務遂行の場」と切り分けられ、誰が責任を持つのかが曖昧になっていたのです。
【改善のヒント】
「育成の最終責任はラインマネージャーにあり、人事はその“伴走者・仕掛け人”である」という前提をトップメッセージとして明確にする
評価制度や目標管理の中に、「部下育成への貢献」をしっかり組み込む(部下の成長が上司の評価に反映される状態)
経営層自身が、自分の直属の部下をどう育てているかを語れる状態にしておく
原因3|現場の“時間設計”に育成の枠がない
現場で最もリアルなボトルネックは、「時間がない」です。
日々の売上・案件・トラブル対応に追われる
部下の質問対応・顧客対応で、1日があっという間に終わる
「育成の時間」は、いつも“空いたらやるもの”になり、結局後回し
ある営業マネージャーが、こんなことをこぼしていました。
「正直なところ、“教えた方が早い”って分かっていながらも、その時間を捻出できない日が続きます。」
彼の部下は、同じようなミスを何度も繰り返していましたが、マネージャーはその都度“自分で尻ぬぐい”をしてしまっていたのです。短期的には自分でやった方が早く片付くのですが、長期的に見れば部下はいつまでも同じレベルで止まり、マネージャーはずっと忙殺され続けます。育成のための時間は「余ったらやる」では絶対に生まれず、最初から計画として組み込んでおくしかありません。
【改善のヒント】
週1回・30分だけでも「育成枠」をカレンダーに先に入れる(1on1・ロールプレイ・振り返りなど)
「教える時間も業務の一部」であると正式に位置付け、チームの稼働計画に組み込む
マネージャーの工数の何%を育成に充てるかを、上長との合意事項にしておく
現場で機能する人材育成の改善策
改善策1|育成ステップを「3〜4段階」に分けて見える化する
人材育成が進まない現場ほど、「いきなり理想の姿」を求めがちです。
「自分で考えて動けるようになってほしい」
「最初から全部任せるのは不安だから、しばらくは様子見」
このギャップを埋めるには、「育成ステップ」を段階に分けて考える必要があります。
【例:営業職の育成ステップ(シンプル版)】
ステップ1:同行・模倣フェーズ
上司・先輩に同行し、トークや段取りを真似する
ステップ2:部分担当フェーズ
ヒアリングだけ、クロージングだけなど、商談の一部を任せる
ステップ3:一人担当フェーズ
一定条件の案件は最初から最後まで担当させる
ステップ4:改善・提案フェーズ
商談の振り返りから、自分で改善策を出せる
私はある会社で、このステップを図にして見せたところ、一人のマネージャーがこう言いました。
「実は、いつまでもステップ1〜2に留めていたのは、私の方でした。 ステップ3に上げる“タイミングの基準”がないから、つい安全サイドに振ってしまっていたんだと気づきました。」
【行動ポイント】
職種ごとに“3〜4段階の育成ステップ”を作り、「今このメンバーはどこにいるか」「次の1段階上げるには何を任せるか」を会話できる状態にする
「次のステップに上げる判断基準」も合わせて言語化しておく
ステップごとに「任せる仕事の例」を3〜5個ずつストックしておくと、急な機会にも振り分けやすくなる
改善策2|「OJT=つきっきり指導」から「設計された経験学習」に変える
よくあるのが、「OJT担当者に任命した=育成しているつもり」になってしまうケースです。
実際には、“困ったときに聞く先輩”になっているだけ
計画も振り返りもなく、日々の業務を一緒にこなしている状態
OJTを“設計された経験学習”に変えるには、最低限この3つが必要です。
何を任せるか(業務の範囲・難易度・期限)
どうサポートするか(事前説明・同行・フィードバックの頻度)
どう振り返るか(週1回のレビュー・次のチャレンジ設定)
私は、OJTの設計を一緒に見直した企業で、ある先輩社員からこんな声を聞きました。
「正直なところ、今までは“なんとなく一緒にやる”だけでした。 今は、『今日はここまで任せて、終わったら10分振り返ろう』と最初に決めて動けるので、自分も教えやすいです。」
教える側にとっても、「何をどこまで任せるか」が決まっているだけで、自分の関わり方に迷いがなくなります。教わる側も「自分はどこまで自走することを期待されているのか」が明確なので、安心して挑戦できるようになります。
【行動ポイント】
OJT担当者に「教えるコツ」を説く前に、「任せる仕事の設計テンプレ」と「週1レビュー用の簡単なシート」を渡す
「任せた仕事のうち、どこまで自力でできたか」を一緒に可視化する習慣をつくる
OJT担当者自身が「自分も育っている実感」を持てるよう、上長からの定期フィードバックも組み込む
改善策3|評価・フィードバックを“育成のメイン装置”として使う
人材育成と評価が切り離されていると、こんなことが起きます。
上司は「育成したい行動」と「評価で見ている指標」がズレている
部下は「結局、何をやれば評価されるのか分からない」
研修で学んだ行動が、評価に反映されない
私は、評価制度の見直しを支援した現場で、部下の一人がこんな本音を話してくれました。
「実は、“チームのための提案”を出しても、評価表にはあまり反映されない気がしていました。 だから、少しずつ“自分の数字”だけを追うようになっていました。」
その会社では、評価項目に「チームへの貢献」や「後輩育成」のウェイトを明確に入れたことで、
会議での提案数
後輩へのサポートの申し出
が目に見えて増えていきました。評価で何を見るかは、組織が「何を大事にしているか」を最も雄弁に語るメッセージです。だからこそ、評価制度は“査定の道具”ではなく、“育成の方向を示すコンパス”として設計し直すことに意味があります。
【行動ポイント】
評価項目に「行動」と「成果」の両方をバランスよく入れる
面談では、「何ができるようになったか」と「次の期にどの行動を増やすか」をセットで話す
フィードバックの質を上げるために、上司側にも「対話の型」を提供する
よくある質問(FAQ)
Q1:人材育成がうまくいっているかどうかを、何で判断すべきですか?
A1:短期的には「期待する行動の実行率」、中長期では「昇格・異動の内部充填率」「離職率」「後輩指名率」などが判断材料になります。業績指標だけで見ると“育成の効果”と“市場環境”の影響が混ざってしまうため、行動指標と組み合わせて見るのがおすすめです。
Q2:人事と現場、どちらが“主導”すべきですか?
A2:方向性や仕組みづくりは人事、日々の実践とフィードバックは現場マネージャーが主導、という役割分担が現実的です。どちらか一方に偏ると、制度倒れか属人化のいずれかに陥りやすくなります。
Q3:小さな会社でも、ここまできっちり設計する必要がありますか?
A3:規模に応じて簡略化はできますが、「理想の人材像」「育成ステップ」「評価との連動」の3つはどんな規模でも押さえておきたいポイントです。むしろ小規模な組織の方が、社長の言葉と現場の運用を直結させやすいという強みがあります。
Q4:研修なしでも、人材育成は可能でしょうか?
A4:可能です。OJT・1on1・プロジェクト経験など、日常業務に“学びの設計”を埋め込めば、研修の本数が少なくても育成は機能します。むしろ、研修偏重よりも“現場での経験学習”の比重を高めた方が、定着率が上がるケースも多いです。
Q5:現場が「忙しいから育成は無理」と言うときの突破口は?
A5:全てを増やすのではなく、「やめる仕事」「任せる仕事」を一緒に整理し、“育成に使う時間”を先にカレンダーに確保するところから始めるのが現実的です。「忙しい」を解消するのも、実は育成プロセスの一部だと捉え直すとよいでしょう。
Q6:若手が“教わりたがらない・指摘を嫌がる”場合はどうすれば?
A6:一方的な指導ではなく、「どうなりたいか」「どこに不安があるか」を最初に聞き、本人のゴールと育成内容を紐づける対話から始めることが有効です。「指摘される場」ではなく「自分の目的のために対話する場」だと感じられれば、受け取り方は大きく変わります。
Q7:評価と育成を連動させると、かえって圧力になりませんか?
A7:数字だけを詰めるとそうなりますが、「行動と成長のプロセスも評価する」設計にすると、プレッシャーより“納得感”につながります。大切なのは、「結果が出るまでの過程の努力もちゃんと見ている」ことを評価面談で言葉にして伝えることです。
Q8:人材育成の成果が出始めるまで、どれくらいかかりますか?
A8:施策にもよりますが、多くの現場では「半年〜1年」で“変化の兆し”、2〜3年で“文化としての定着”を実感するケースが多いです。短期で成果を求めすぎると、現場が消耗するだけで終わるので注意が必要です。
Q9:全社員一律の育成と、個別最適の育成、どちらを優先すべき?
A9:まずは「共通の土台となる育成(マインド・基本スキル)」を整え、そのうえで役割やポテンシャルに応じた個別育成を足していく二段階構成が現実的です。共通の土台があるからこそ、個別育成の効果も最大化されやすくなります。
まとめ
人材育成が機能しない本当の理由は、「研修の量が足りない」ことではなく、「理想の人材像と育成ステップが曖昧」「責任の所在が人事任せ」「現場の時間設計に育成が組み込まれていない」ことにあります。
正直なところ、ゼロから大掛かりな制度を作り変える必要はありません。それよりも、「育成ステップの見える化」「OJTの設計」「評価・フィードバックとの連動」という“土台の3点セット”を整える方が、短期〜中期での手応えは大きくなります。
実は、「どんな人材を何年で育てたいのか」「今の育成のどこが一番ボトルネックか」を一度言葉にして整理するだけでも、次に打つべき一手はぐっと絞り込まれ、人材育成が“やることが多すぎて途方に暮れるテーマ”から“現場と一緒に改善していけるテーマ”へと変わっていきます。
今、「育成には投資しているのに、現場での変化を説明しきれない」と感じているなら、一度立ち止まって設計を見直すタイミングです。 最初に「育てたい人材像」と「現場で一番詰まっているポイント(時間・役割・評価など)」を一つずつ教えてもらえれば、そこから御社に合わせた“人材育成の設計図”を一緒に描いていけます。




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