リーダーシップが発揮されない原因とは?改善方法
- HUGME代表 高橋

- 6月17日
- 読了時間: 13分
“カリスマ像”の幻想を手放し、現場で複数のリーダーが育つ仕組みのつくり方
リーダーシップが機能しないのは、「リーダーに資質がないから」ではなく、「役割の定義・任せ方・周囲の支え方」がちぐはぐなまま、“リーダー一人に頑張らせている”構図になっているからです。結論として、現場でリーダーシップを発揮させるには、何をリードしてほしいのかを行動レベルで明確にすること・小さな範囲から経験を積ませること・リーダーを一人にしない仕組みを用意すること、この3つを外さないことが決定打になります。
【この記事のポイント】
要点1|“カリスマ像”で語られすぎて、行動レベルに落ちていない
正直なところ、「うちにはリーダーシップのある人材がいない」と嘆く現場ほど、リーダーに求める姿が“カリスマ像”で語られがちで、日々の行動レベルに落ちていません。その結果、「理想像と自分のギャップ」に萎縮する人が増えます。
要点2|役割のあいまいさ・小さな成功体験不足・セーフティネットの欠如が共通点
実は、「リーダーシップが出ないチーム」に共通しているのは、役割や権限があいまい・小さな成功体験を積む場がない・失敗したときのセーフティネットがない、という3点です。リーダー個人の性格の問題だけではありません。
要点3|行動の絞り込み・小さな経験の量・支えるリーダーシップが鍵
失敗しないためには、「リーダーに期待する行動を3〜5個に絞る」「プロジェクトや少人数チームでの“小さなリーダー経験”を大量に用意する」「周囲が“支えるリーダーシップ”を発揮する」ことで、現場にリーダーが増えていく土壌を整えることが重要です。
この記事の結論
結論1|“リーダーになるための階段”が設計されていないことが本質
一言で言うと「リーダーシップが機能しないのは、“リーダー像”に比べて、“リーダーになるための階段”が設計されていないから」です。
結論2|「全部できる人」幻想を手放し、役割ごとに分けて経験させる
最も重要なのは、「リーダーは全部できる人」という幻想を手放し、「方向を示す人」「場を整える人」「決断する人」「人を育てる人」といった役割ごとに求める行動を分け、段階的に経験させていくことです。
結論3|抜擢の瞬間に丸投げせず、3つの安全装置を組み込む
失敗しないためには、「抜擢した瞬間に丸投げ」ではなく、任せる範囲を徐々に広げる・定期的な振り返りとフィードバックをセットにする・合わなかったときの“別ルート”もあらかじめ用意しておく、という三つの安全装置を組み込むことが欠かせません。
なぜリーダーシップが機能しないのか
理由1|「理想のリーダー像」が大きすぎて、現場レベルに落ちていない
リーダーシップの研修や書籍には、魅力的な言葉が並びます。
ビジョンを描ける
人を巻き込める
決断が早い
戦略と現場をつなげられる
ただ、現場のリーダー候補がそれを聞いたとき、心の中でこんな声が生まれます。
「正直なところ、ここまで全部できる自信はない。」 「自分は、“普通の人”のまま終わるタイプなんじゃないか。」
私が以前お手伝いした企業でも、管理職研修の最初に「理想のリーダー像」を出し合うワークをしていました。 出てくるのは、どれも立派な言葉。
「常に冷静」
「誰からも信頼される」
「変化を怖れず挑戦する」
その場は盛り上がるのですが、休憩時間に廊下で聞こえてきたのは、こんな本音です。
「いや、あれは“漫画の主人公”の話だよね。」 「あれを目指せと言われると、むしろ萎えるなあ。」
理想像が大きすぎると、本来リーダーになり得る人ほど“自分には無理”と感じてしまうという皮肉な結果につながります。
【よくある失敗】
リーダー像を“抽象的で完璧な人物像”で語り、“明日から何をすればいいか”を伝えきれていない
「あなたにはリーダーシップが足りない」と言うだけで、「どの場面で、どんな行動が足りないのか」を具体化していない
【ここを変える】
「うちの組織にとっての良いリーダー」を、具体的な行動レベルで定義する
例:
「週1回、メンバーに“今やりづらいことはある?”と聞く」
「月1回、チームの課題を言語化して上に提案する」
「全部できる人」を探すのではなく、「特定の強みを持つリーダー」が複数いる状態を目指す
完璧像を一人に求めるのではなく、補完し合えるリーダー陣を育てる発想に切り替える
理由2|任せ方が「ゼロか100」になっていて、失敗しやすい環境になっている
よくあるのが、次の2パターンです。
パターンA:
いつまでもリーダー経験をさせない
「まだ早い」「もう少し様子を見てから」と言っているうちに、本人の意欲がしぼむ
パターンB:
ある日突然、「来月からこのチームのリーダーね」と“全部任せる”
権限や期待も曖昧なまま、メンバー管理・数字管理・プロジェクト管理のすべてが一気に乗る
以前、ある35歳の課長と話していたとき、こんな言葉が出てきました。
「実は、自分自身が“リーダーの階段”をあまり踏まずにここまで来たんです。 なので、課長になる前の不安と、“上がってからの孤独感”の両方を味わいました。」
彼のチームの若手にも同じパターンが起きていました。
「いつかリーダーになってほしい」と言われながら、具体的な経験は与えられない
いきなり大きなプロジェクトを任され、「これで失敗したら終わりだ」と感じてしまう
任せる側の「失敗させたくない」という親切心が、結果的に成長の機会を奪ってしまう、という典型的な構図です。
【よくある失敗】
「失敗させないため」に、いつまでも任せない
「期待しているから」と、一気に大きな役割を渡して、フォローが薄い
【ここを変える】
リーダー経験を、「3〜4段階」に分ける
例:
会議の進行役
小さなプロジェクトのリーダー(2〜3人)
正式なチームリーダー
各段階ごとに、「任せる範囲」と「上司が一緒に持つ責任」を明示する
段階を上げるタイミングは、本人とも対話して決める
理由3|リーダーが「一人で背負う前提」になっていて、支援の仕組みがない
リーダーシップが機能しない組織ほど、こんな構図になりがちです。
「リーダーなんだから、それくらい自分で何とかしてほしい。」
「管理職は孤独なものだ。」
ある会社で、新任マネージャー向けのインタビューを行ったとき、一人がこう話してくれました。
「正直なところ、“相談していいこと”のラインが分からなくて。 悩みをそのまま上に投げると、“任せた意味がない”と思われる気がしてしまう。」
その結果、
部下の相談は受けるが、自分の相談は誰にもできない
1on1では部下の話を聞くが、自分は“聞かれる側”になる機会がない
家に帰ってから、スマホを見つめながら、「これでよかったんだろうか」と何度も同じシーンを頭の中で再生してしまう
リーダーが孤立する組織では、リーダー自身が疲弊するだけでなく、後に続く人材も「あの大変そうな役は引き受けたくない」と感じてしまい、リーダー候補のパイプラインが細っていきます。
【よくある失敗】
管理職やリーダー向けの“期待”は高くても、“相談できる場”や“失敗を共有できる場”は用意されていない
「リーダーが弱音を吐くのはよくない」という暗黙の空気がある
【ここを変える】
新任リーダー向けに、「同じ立場の人同士が悩みを共有する場」を定期的に設ける
上の立場の人が、自分の過去の失敗や葛藤を正直に語る
「リーダーほど、支え合う仕組みが必要」という前提に切り替える
リーダーシップを現場で発揮させる具体的な方法
方法1|リーダーに期待する行動を「3〜5個」に絞って定義する
まずは、「うちの組織でのリーダーシップ」を、シンプルな行動セットに落とし込みます。
【ステップ】
経営・人事・現場リーダーで、“こんなリーダーが増えたら嬉しい”という姿を出し合う
そこから、「特に重要な3〜5つの行動」を選ぶ
例:
チームの目標と現状を、月1回メンバーに言葉で伝える
週1回、メンバーに「最近やりづらいことは?」と尋ねる
月1回、チームの成功事例を全員に共有する
その行動を、「リーダー評価」「育成計画」「研修コンテンツ」と一貫させる
私が関わったある企業では、リーダー像が20項目くらいに膨らんでいました。 結果として、誰も覚えられない。
そこで、「リーダーに期待する行動ベスト5」をつくりました。
「方向を示す」
「対話する」
「任せる」
「守る」
「伝える」
各項目の下に、2〜3個の具体的な行動例。 それをポケットサイズのカードにして、リーダー研修のたびに見返すようにしました。
あるリーダーは、こう話していました。
「実は、それまでは“良いリーダー”と“自分”の間に大きな谷がある感覚でした。 でも、このカードに書いてある行動なら、“明日これをやってみよう”と考えやすくなりました。」
絞り込みは、リーダーへのプレッシャーを減らす効果もあります。あれもこれも求められる状態より、「これだけは外さない」という形の方が、結果的に行動が積み上がります。
【ポイント】
欲張らず、「これだけは」という行動に絞る
行動例は、観察できるレベルまで具体化する(“気にかける”ではなく“週1回声をかける”など)
行動セットは半年〜1年で見直しをかける
方法2|“小さなリーダー経験”を大量に用意する
リーダーシップは、「役職」よりも「経験」です。 いきなり正式な役職を渡す前に、小さなリーダー経験を意図的につくり出します。
【小さなリーダー経験の例】
会議のファシリテーター役
プロジェクトのタスクオーナー
新人のOJT担当
チームの改善テーマ(会議の短縮・マニュアル整備など)の責任者
私は、あるチームで「プロジェクトリーダーのローテーション制」を導入したことがあります。
3〜4人のメンバーで構成される小さなプロジェクト
1か月〜3か月単位で、リーダー役を交代
最初は「自分なんて…」と尻込みしていたメンバーも、終わった頃にはこう話していました。
「正直なところ、引き受けたときは“無理だ”と思っていました。 でも、一度やってみたら、“あ、ここは得意かもしれない”“ここは他の人に助けてもらえばいいんだな”と、自分なりのリーダー像が少し見えました。」
経験を積むまでは、本人もまわりも“向き不向き”を判断できません。だからこそ、判断材料を集めるためにも、まず小さく試してみる場が必要です。
【ポイント】
「選ばれた一部のエリート」だけでなく、複数の人にリーダー経験を回す
経験のあとには必ず、「何がうまくいったか」「何が難しかったか」「次やるならどうするか」を振り返る場を設ける
経験を通じて「自分は管理職向きではない」と気づくのも、健全な選択肢として尊重する
方法3|リーダーを一人にしない“伴走の仕組み”を入れる
リーダーシップが継続的に発揮されるかどうかは、「孤立させない仕組み」があるかどうかにかかっています。
【伴走の仕組み例】
メンター制度
新任リーダーに、1つ上の先輩リーダーをメンターとしてつける
月1回の30分で、「最近の悩み・うまくいっていること・助けてほしいこと」を話す
リーダー同士のピアグループ
部署や役職の違うリーダーが集まり、互いのケースを共有する場
成功だけでなく、「失敗談」を共有することを歓迎する文化をつくる
上司との定期1on1
「数字とタスク」だけでなく、「リーダーとしての感情」「チームとの関係性」をテーマに含める
ある会社で、「新任課長ラウンジ」という月1回のオンライン会を始めたときのことです。 最初の数回は、みんな固い表情でした。 しかし、一人の課長が思い切って、自分の失敗談を話しました。
「実は先月、部下のミスに感情的になってしまって…。 後から謝ったんですが、信頼を削ってしまった気がして。」
そこから、チャット欄が一気に活発になりました。
「私も似たようなことがありました。」
「こういうとき、どうやって気持ちを切り替えていますか?」
会の終わりに、別の課長がこう言いました。
「正直なところ、今までは“自分だけが下手なんじゃないか”と思っていました。 みんなも同じように悩んでいると知れて、少し肩の力が抜けました。」
弱さを共有できる場の存在は、リーダーの精神的なサバイバルに直結します。
【ポイント】
「リーダーは強くあれ」というメッセージだけでなく、「リーダーほど支え合おう」というメッセージを組織として発信する
伴走の場での話は、「評価には直結させない」ことを明言し、安心して話せる場にする
メンター・ピアグループ・上司の3つの“支え”を多層で持たせる
よくある質問(FAQ)
Q1:リーダーシップは、生まれつきの資質でしょうか?
A1:一部の特性はありますが、多くは「役割と行動を理解し、経験を積み、フィードバックを受ける」プロセスで伸びます。資質よりも環境と設計の影響が大きいです。生まれつきと割り切ってしまうと、組織として打てる手がほとんどなくなってしまいます。
Q2:内向的な人でも、リーダーになれますか?
A2:なれます。カリスマ型ではなく、「よく聞く」「一人ひとりと丁寧に向き合う」タイプのリーダーも組織には必要です。強みの活かし方を一緒に設計すれば十分機能します。むしろ、内向型のリーダーの方がメンバーに安心感を与えるケースも少なくありません。
Q3:「自分はリーダーに向いていない」と本人が言う場合、どうすれば?
A3:「向いていない理由」を一緒に言語化し、小さなリーダー経験を通じて確認していくのが現実的です。そのうえで、別のキャリアパスを選ぶのも立派な選択肢です。決めつけずに、まずは試してみる機会を提供することが大切です。
Q4:リーダーのミスを、どこまでフォローすべきですか?
A4:致命傷は組織としてカバーしつつ、「何が起きたか」「次どうするか」を一緒に振り返る時間は必須です。すべてを肩代わりすると、成長の機会を奪うことにもなります。フォローの線引きは、本人の成長段階に合わせて調整するとよいでしょう。
Q5:リーダー候補が複数いると、現場がやりづらくなりませんか?
A5:役割を分ければ問題ありません。「案件のリーダー」「育成のリーダー」「改善のリーダー」など、テーマごとにリーダーを立てると、むしろチームの厚みが増します。一人にすべてを集中させる方が、リスクも疲弊も大きくなります。
Q6:忙しくて、リーダー育成に時間が割けません。どうしたら?
A6:既存の仕事の中に「リーダー経験」を埋め込むのがおすすめです。会議の進行、プロジェクトの担当、後輩指導など、今ある業務を“育成の場”として再設計します。育成の時間を別途確保しなくても、視点を変えれば学びの場は身近にあるものです。
Q7:リーダーシップ研修だけで、現場は変えられますか?
A7:研修はきっかけにはなりますが、「任せる場」と「振り返る場」がなければ定着しません。現場での運用とセットで考える必要があります。研修で学んだことを試せる場を意図的に用意することが、研修の投資効果を最大化します。
Q8:今いるリーダー層にバラつきが大きく、どこから手をつけるべき?
A8:まず「リーダーに期待する行動」を全員で言語化し、そのうえで共通のテーマ(例:1on1・フィードバック・任せ方)を決めていくのが現実的です。共通の軸ができると、ばらつきの状況も見えやすくなります。
Q9:リーダー職から降りたいと言われた場合、どう対応すべき?
A9:本人の話を丁寧に聞き、原因(役割の不一致・負荷・支援不足など)を整理します。そのうえで、別のポジションやキャリアを検討することで、本人の強みを活かし続ける選択肢もあります。降格を“失敗”として扱わない制度設計が、本人と組織双方にとって望ましい関係を保ってくれます。
まとめ
リーダーシップが機能しない背景には、「理想像が大きすぎる」「任せ方がゼロか100」「リーダーが孤立している」という3つの構造的な問題があります。
正直なところ、「リーダーシップのある人がいない」と嘆く前に、リーダーの役割と行動を具体的に定義し、小さなリーダー経験の階段と伴走の仕組みを用意する方が、はるかに現実的で効果的です。
実は、いきなり“完璧なリーダー”を育てる必要はありません。まずは、「会議を1つ任せてみる」「小さなプロジェクトのリーダーを回してみる」「月1回、リーダー同士が悩みを話す場をつくる」といった小さな実験から始めることで、現場にリーダーシップの芽が少しずつ育っていきます。
いま、あなたの現場で一番強く感じているのは、「リーダー像があいまい」「任せ方と経験の設計がない」「リーダーが孤立している」のどれに近いでしょうか?




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